会長ご挨拶
この度、「第26回日本逆流性腎症フォーラム・学術集会」を2018年2月3日(土)に東京都新宿区の慶應義塾大学信濃町キャンパス・北里講堂において開催させていただくことになりました。
このフォーラムは、有熱性尿路感染症の最も重要な基礎疾患である膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux: VUR)、およびそれにともなう腎実質病変で末期腎不全の要因ともなる逆流性腎症(reflux nephropathy: RN)に関し、その成因・病態・診断法・保存的/外科的治療などの基礎・臨床研究を通じて、未来ある世代の腎機能予後の改善に寄与することを大きな使命としています。「日本逆流性腎症研究会」を前身として1993年に発足し、現在では全国44施設が幹事施設となり、泌尿器科医・小児科医・小児外科医を中心としてその会員数は約200名となっています。学術集会での各施設からの症例報告、最新の診断や治療法、包括的な臨床研究などの発表・討論のみならず、本フォーラムが主導して多施設共同研究が行われています。すでに乳児期のVURやRNに関してはその実態を明らかにし、英文雑誌において論文発表されています(The Journal of Urology, 169, 309-312, 2003)。また、2011年からはVUR患児登録システムが開始され、すでに約600例のデータベースが集積されています。
近年、VURやRNに対する考え方は大きく変わってきました。VURの存在そのもの以上に随伴する排泄障害(bladder and bowel dysfunction)が患児の臨床経過や腎障害、そして手術成績にも大きく影響することが明らかとなっています。尿路感染症のコントロールはRNの進展を防ぐためには非常に重要ですが、抗菌薬の予防投与が必ずしも全ての患児に有用ではないことも明らかとなってきました。治療面では低侵襲な治療法としてDefluxによる内視鏡下注入療法が幅広く行われるようになりましたが、その長期成績や晩期合併症についても報告されるようになっています。しかしながら、これらはいずれも欧米を中心とした海外からの研究成果がその主な根拠となっています。今後、本フォーラムの存在意義においても本邦から世界に発信できる新たな研究成果が待ち望まれています。
そこで今回は、本学術集会を主催させていただくにあたり、そのテーマを「今、これから、我々から発信できること!」とし、これに沿ったシンポジウムを企画しました。本フォーラム主導で現在進行中の多施設共同研究の結果や展望、最近各施設から英文論文で発表された研究成果、近い将来に世界向けて発信できる魅力あるトピックスなどについて討議し、データベースの活用や前方視的多施設共同研究の推進など本フォーラムの今後のあり方についても考えたいと思います。
特別講演としては、和歌山県立医科大学先端医学研究所・山田 源先生にVURを含めた先天性腎尿路異常の発生に関したミュータントマウス系を用いた研究成果と基礎研究の素晴らしさやその魅力についてご講演いただく予定です。また、VURをはじめ小児の尿路疾患の診断には非侵襲的な検査法が求められますが、茨城県立こども病院臨床検査部・浅井宣美先生には超音波検査による尿路疾患診断の可能性をレクチャーしていただく予定です。さらに、一般演題としても多くの興味深いご演題を採択させていただいております。
本フォーラム・学術集会を有意義なものとするためにも、当日は多くの皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げております。また、活発なご討議をよろしくお願いいたします。
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